【コラム】第3回  健康経営に取り組む意義 ~従業員の健康課題に合わせた健康経営の展開~

前回、それぞれの企業の健康課題について取組みを行うことが大切であると書きました。健康経営は、従業員の健康を根幹資源と捉えて、それに投資することによって経営上の成果を得ようとする取組みであるため、健康課題は従来の健康管理より幅広く捉えます。そして、が組織に存在する従業員の健康上の課題を認識して、課題に対応した施策を実施することになります。健康経営は、米国では“Health and Productivity”という概念で広がったもので、健康と生産性の関係に焦点を当てて、生産性の阻害要因になっている健康課題に対する企業の投資を促しました。生産性とは、従業員にとっても職業生活の充実と置き換えられますので、双方にとって利益がある概念です。

その際、生産性を低下させる健康上の課題には、在職中に死亡したり、早期退職や長期休職を余儀なくされる病気だけでなく、体調不良で病欠を取ったり、仕事に来ていても能率が上がらない場合も含めて、健康課題として捉えられるようになりました。一般に前者をアブセンティーズム、後者をプレゼンティーズムと呼びます。健康経営では、健康課題を解決するために、運動習慣や食生活の改善といった従業員の健康行動を促したり、健康行動を取りやすい環境を整備したりします。そのような健康行動が、長期休職にも、プレゼンティーイズムにも同じように効果があるのであれば、それぞれをあまり意識しなくてもいいのかもしれません。しかし実際には、プレゼンティーイズムの原因は、睡眠不足や不眠、肩こりや腰痛、眼の疲れといった症状が大きな要因となっていることが分かっていますので、これまでの健康管理に合わせて、これらの症状対策を行う必要が出てきます。

さらに、生産性低下による損失を防ぐだけでなく、生産性の向上といったプラス面についても健康経営では着目する必要があります。取組によって、従業員の活力、熱意、没頭で構成されるワークエンゲイジメントが向上すれば、企業の業績に直結することが期待されます。また、従業員個人へのアプローチだけでなく、意欲の高まる職場環境の形成や組織開発といった環境へのアプローチも、健康経営のプログラムの選択肢になります。

多くの企業に、健康経営宣言、体制づくり、一般健康診断を活用したハイリスクアプローチ、そして健康課題に合ったプログラムの提供という流れで、健康経営を進めていただきたいと思います。

・産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室 教授
・日本産業衛生学会 副理事長
・日本労働衛生安全衛生コンサルタント会 副会長
・次世代ヘルスケア産業協議会 健康投資WG主査
・健康経営度調査基準検討委員会 座長
・健康経営優良法人認定委員会 座長

森 晃爾(もり こうじ)

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