【コラム】第1回(全3回) 身体活動ガイド:+10(プラス・テン)

澤田 亨 プロフィール

1983年 福岡大学 体育学部 卒業
1985年 順天堂大学大学院 体育学研究科 修了
1999年 博士(医学)学位 取得(順天堂大学)
1985年~2012年 東京ガス(株)人事部
2012年~2018年 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部 室長

現職 早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授
専門分野はスポーツ疫学・公衆衛生学厚生労働科学研究の研究班の代表として、身体活動・運動分野の多くの研究者と共に「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の原案を作成

2024年1月、厚労省から「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(以下、ガイド)」が公表されました。このガイドは日本政府(厚生労働省)から公表される身体活動ガイドとしては第4版にあたります。

第1版は「健康づくりのための運動所要量」、第2版は「健康づくりのための運動基準2006」、第3版は「健康づくりのための身体活動基準2013」です。

 アメリカ政府が最初に身体活動ガイドを公表したのが2008年、WHOは2010年ですので、日本政府がいかに早く身体活動ガイドを公表したのかが分かります。そして、アメリカは2018年に、WHOは2020年にそれぞれ第1版を改訂して第2版を公表しています。

 日本政府から公表される身体活動ガイドは2部構成になっており、前述したそれぞれは専門家向けに作成されたガイドで、これらのガイドを基にして国民向けのガイドが公表されています。

国民向けのガイドの第1版は「健康づくりのための運動指針」、第2版は「健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド)」、第3版は「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」と呼ばれています。

第4版となる国民向けのガイドについては、2024年11月末時点で公表されておらず、2024年末か2025年の年始に公表されるものと思われます。

 アメリカやWHOが公表しているガイドと日本のガイドには、細かな部分に違いがあっても大筋は同じです。それは、それぞれのガイドが作成時点までに蓄積されきた世界中のエビデンス(学術論文)を確認して作成しているために、ほとんどが同じ学術論文を根拠に作成されいるためです。

 世界中から公表されてきた学術論文のほとんどは「身体活動が多い人ほど、健康リスクが低い」という結果を示しています(図1)

 そのためアメリカのガイドは「何もしないよりかは、少しでも身体を動かした方が良い」、WHOは「まったく身体を動かさないより、少しでも身体を動かす方がよい」、イギリスは「どんな活動でも、何もしないよりはましであり、さらに活動量が多いほど良い」、カナダはアメリカと同様に「何もしないよりかは、少しでも身体を動かした方が良い」と表現しています。

 これらに対し、日本はアクティブガイドにおいて「+10」というシンプルなメッセージで「今より10分多くからだを動かすだけで、健康寿命をのばせます。あなたも+10で、健康を手に入れてください」と伝えています(図2)。

 私たち(厚生労働省の研究班)は、第4版となる今回のガイドを基にした国民向けのガイドでは「+10」に代えて新たなメッセージを発信することを厚生労働省に提案しています。

 次回はこのメッセージの内容やその背景にあるエビデンスを紹介したいと思います。 

※次回のお届けは2月です。

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