【コラム】第1回(全3回)「日本のフィットネス市場は、なぜ成長していないのか?」

 世界は、今日までに右肩上がりに発展してきたのに、なぜいまだに各地で戦争や内紛が起こり、分断や貧富の差の広がり、コロナのような疫病への対応も十分にできない状況が起こっているのでしょうか?それだけでなく、温暖化による地球規模の環境破壊や経済の低成長に対して、各国が連携して解決に向かう動きが取れないのは、どうしてなのでしょうか?

こうした問題を解決する方法があるとしたら、それは何でしょう?

ぼくは、フィットネス産業の発展こそ、解決策だと思っています。

 なぜなら、WHO(世界保健機構)の定義を持ち出すまでもなく、一人ひとりが健康になろうとすれば、自分の心と身体を大事にし、つながりも大切にしようとするからです。フィットネスをすることで、人材も組織もそうした状況になれるからこそ、イノベーションを起こそうと思ったり、近隣を愛して豊かな社会をつくろうと思ったりするわけで、その過程もフロー状態にできるかと思うのですが、その先に真のウェルビーイング(個々人の多様な幸せ)があるのではないかと思うのです。

ということは、健康産業こそが、世界の諸問題を解決するインフラ産業だということになります。アメリカ生まれ、日本育ちのぼくの友人に訊いたところ、「fitness」という言葉には「準備ができた状態にすること」というニュアンスがあるそうです。ここからも“インフラ”産業だと言えるのではないでしょうか。本来なら、もっとプライドを持って革新的な取り組みを進め、文字通りのインフラ産業とまわりが呼ぶ業界にしていなければいけません。

 でも、日本のフィットネス業界の現状は、実際にはどうでしょう?

 フィットネス参加率は、公共セクションなどを含めたとしても、多くて10%程度なのではないでしょうか?既存事業者に至っては、その多くが、まだコロナ前の売上高、利益額に達していません。サービス品質を変えることなしに、度重なる値上げをしているので、新しい顧客が入会せず、利用者の多くは既存の顧客層と同じで、なかなか在籍会員数が伸びていきません。利用率の伸びもそれほど高くなってきていません。また、スポーツ参加率についても、50%前半にとどまったままです。

 それに対して、世界のフィットネス業界は、ぐんぐんと伸びてきています。世界一のフィットネス参加率のアメリカは、24.9%であり、そのほかノルウェー、スウェーデン、フィンランド、オーストラリア、ニュージーランドなど、20%を超えている国々は多い。さらに、利用率も伸びて、アクティブに利用されています。また、こうした国々は、スポーツ参加率も60%を超えています。

 なぜ、2~3倍の差があり、さらに時とともにその差が開くばかりで、いっこうに縮まらないのでしょうか?その原因には、もちろん保険制度の違いや国民性など構造的、文化的な問題もあるかとは思いますが、突き詰めると、外的な要因にあるのではなく、内的な要因にあると思うのです。特に既存事業者においては、自ら変化対応、変化創造していくことができていなかったのです。

 日本のフィットネス市場が、世界のフィットネス先進各国に後れを取りながらもこの間に成長できたとするなら、それ新興事業者のおかげです。カーブスやエニタイムフィットネス、Dr.stretch、フィットイージーなどの成長ぶりは、既存の事業者を大きく上回っています。

 では、日本のフィットネス市場やスポーツ市場が、ここから成長していくために、最も必要なものは何か?そして、事業者は、具体的にどのような発想と姿勢で仕事をしていけばよいのか?次回、次々回のコラムで、書いていきたいと思います。

古屋武範氏 株式会社クラブビジネスジャパン 代表取締役社長

『Fitness Business』『Wellness Business』 編集発行人、FIAフィットネスクラブマネジメント検定テキスト編集者、(一社) 日本フィットネス産業協会 (FIA) 理事、日本心理的資本協会理事、IHRSAアンバサダー、 FVL(フィットネスベンチャー研究会)主宰、 SPORTEC共催社。グローバルサービス座談会委員、スポーツ未来開拓会議委員を歴任。ex-ACSM HFI、BMIA公認コンサルタント。早稲田大学卒 、ア式蹴球部(サッカー部)に所属。

WBS、 Newsモーニングサテライト、 有吉のお金発見 突撃!カネオくん、所さん!事件ですよ!などのTV、 朝日・読売・毎日・山梨日日・日経などの新聞各紙、 『レジャー白書』 ・ 『エイムの挑戦』 などの著書や企業、大学院(MBAコース)などの講演多数。大手各社からベンチャー、新規参入企業や総合研究所、コンサルティング会社などで、社外取締役や相談役、コンサルタント、ファシリテーターなどを経験。

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