2021.02.10
このコラムのシリーズタイトルは、詩人茨木のり子さんが1977年に出した詩集のタイトルにもなった代表作の詩から取りました。
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
大学生の時に出会ったその瞬間に、最初の三行で頭から水をかぶせられたような気がしたのを覚えています。あれから40年以上経つ今でも、すっぴんの少女のような気持ちで、背筋がぴーんとし、自分の感受性をとんとんと叩いてみたくなる詩です。
そして、生きる姿勢が凝縮された強烈な三行で終わります。
自分の感受性ぐらい
自分で守れ
ばかものよ
中高生や大学生に話す機会には必ずといっていいほど聞く質問があります。「今のあなたは何でできていますか。」私の答えは、日々の選択。小さな選択、大きな選択、いずれも、自分で選んだこと。その積み重ねが今の自分で、誰も責任を取ってくれない。誰のせいにもできない。一瞬、一瞬、自分が選んでいるということを忘れないで、大切に選んでねと。
この詩を久しぶりに引っ張りだしたのは、詩のソムリエという素敵な肩書をもつ友人の渡邊めぐみさんとのやりとりからでした。ひとりひとりに合う詩を選んでくれるソムリエめぐちゃんが、共通の友人の杉本綾弓さんという起業家に贈ったのが、この「自分の感受性くらい」でした。そして、少し間をおいて、私には、塔和子さんの「胸の泉に」という詩を贈ってくださいました。「胸の泉に」の後半だけご紹介します。
そして人は 人の間で思いを削り思いをふくらませ
生を綴る
ああ何億の人がいようとも
かかわらなければ路傍の人
私の胸の泉に
枯れ葉いちまいも
落としてはくれない
人との関わりで生きている私たちにとって、時にはしんどい関わりもあるけれど、それがなければ枯れ葉さえも触れることのない人生になってしまうと。この詩は、今、出会えたからこそ、そこに込められた思いが伝わってくるような気がします。ワインのソムリエが、フレッシュなボジョレヌーボーを選んだり、熟したビンテージのボトルを選んだりするように、詩のソムリエがあなたに合った詩を選んでくれる。なんて素敵な贈り物でしょう。
あなたも詩のある暮らしで、瑞々しい感受性を!
※めぐちゃんがこの塔和子さんの詩を紹介しているブログがあるので、ぜひお読みになってください。
めぐちゃんのブログ「詩を食べる ポエジオ食堂」
https://note.com/poezio_shokudou
松田美幸
福津市副市長